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税金・医療費の控除と制度

妊娠の確定申告・医療費控除のやり方を5ステップで解説

中村 亜希 / 更新:2026-06-24
妊娠の確定申告・医療費控除のやり方を5ステップで解説
出産の年は思った以上にお金が出ていきます。「健診も交通費も全部対象になるの?」「一時金をもらったら控除はゼロ?」と不安になる気持ち、よく分かります。結論から言うと、補填金を差し引いても自己負担が10万円(または総所得の5%)を超えれば、確定申告で還付を受けられます。

この記事では、対象になる費用と差し引くお金の計算、共働きでどちらが申告すると得かまで、私が窓口相談で実際に使っている判断軸でまとめます。

申告そのものの所要時間は、書類がそろっていれば30分〜1時間ほど。難易度は「家計簿がつけられる人なら大丈夫」レベルです。書いているのはFP実務7年の中村亜希。給付金の取りこぼしゼロを目標に、毎回一次情報を確認しています。

妊娠・出産の医療費控除とは?基本と対象になる費用

【確定申告】妊娠・出産費用のうち医療費控除の対象になるものは?
【確定申告】妊娠・出産費用のうち医療費控除の対象になるものは?

妊娠・出産にかかった費用は、条件を満たせば医療費控除の対象です。確定申告で手続きすると、1年間に支払った医療費から保険金などで補填された分を引き、さらに10万円(または総所得金額等の5%)を超えた部分が控除されます。

国税庁は、妊娠と診断されてからの定期検診・検査費用や通院費用を、対象になる出産費用の具体例として明記しています。ここはあいまいではなく公式に書かれている部分です。

医療費控除の仕組みと受けられる条件

控除額の計算式はシンプルです。「1年間に支払った医療費 − 補填される金額 − 10万円」。この答えがプラスなら、その金額が所得から差し引かれます。

医療費控除の仕組みと受けられる条件

総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく「総所得金額等の5%」が基準になります。産休・育休で所得が下がった年は、ここが効いて控除を受けやすくなることがあります。

もう一つ大事なのが、家族分を合算できる点。生計を一にする夫・子ども・親の医療費もまとめて申告できます。

妊娠・出産で控除の対象になるもの

対象になる代表例を表にしました。私が相談で「これ入りますか?」と聞かれる頻度が高いものを並べています。

妊娠・出産で医療費控除の対象になる主な費用
費用の種類対象になるかひとこと
妊娠後の定期検診・検査費対象国税庁が具体例として明記
分娩・入院費用対象出産育児一時金は後で差し引く
通院の電車・バス代対象領収書がなくても記録でOK
不妊治療・人工授精の費用対象治療としての費用は含められる
治療目的の医薬品代対象つわりの薬なども該当

対象にならないもの・間違えやすい費用

逆に「入れてしまいがちだけど対象外」のものもあります。ここを間違えると後で指摘されかねないので、先に潰しておきます。

対象にならない・注意したい費用
費用の種類扱い理由
里帰り出産の自家用車のガソリン代・駐車場代対象外公共交通機関が原則
入院中の差額ベッド代(本人都合)原則対象外自己都合の快適さは治療ではない
妊婦用の下着・パジャマ・マタニティ用品対象外治療に直接必要ではない
健康増進のためのサプリ・健診前の任意検査対象外治療目的でないもの

正直、差額ベッド代は判断が分かれやすい部分です。医師の指示で個室になった場合は対象になることもあるので、領収書の摘要を残しておくと安心です。

妊婦健診や交通費の扱い

妊婦健診は、自治体の補助券を使った分は自己負担になっていないので含められません。補助券で足りずに自分で払った差額が対象です。ここを丸ごと健診費として入れてしまう人が多いので注意してください。

通院の交通費は、本人だけでなく付き添いの分も対象になります。電車・バスは領収書が出ないので、日付・経路・金額をメモで残せば十分です。

申告でいくら戻る?還付金の計算と得するボーダーライン

よく「医療費控除で10万円戻る」と誤解されますが、戻るのは控除額そのものではありません。控除額に自分の所得税率をかけた金額が、おおよその還付額です。

申告でいくら戻る?還付金の計算と得するボーダーライン

所得税率で変わる還付金の考え方

たとえば控除額が10万円でも、所得税率5%の人なら還付はおよそ5,000円、20%の人なら約2万円。同じ医療費でも、稼ぎの多い人が申告したほうが還付は大きくなります。

これが、共働きで「どちらが申告するか」が効いてくる理由です。詳しくは後半で試算します。

出産育児一時金・高額療養費・保険金の差し引き計算

ここが一番間違えやすいところです。出産育児一時金、高額療養費、生命保険の入院給付金、自治体の助成は「補填される金額」として医療費から差し引きます。

ポイントは、差し引くのは“その給付の対象になった費用まで”ということ。出産育児一時金が分娩費を上回っても、上回った分を健診費や他の医療費から引く必要はありません。給付ごとに紐づく費用の範囲で止めてOKです。

差し引き計算のイメージ(分娩費50万円・一時金50万円の例)
項目金額
分娩・入院費500,000円
出産育児一時金(差し引く)−500,000円
分娩費の残り0円
健診差額・通院費・交通費など別途そのまま計上できる

つまり分娩費が一時金で相殺されても、健診の自己負担や交通費が積み上がれば10万円を超えることは十分あります。あきらめて計算しないのが一番もったいない。

得をする世帯年収と医療費の目安

ざっくりの目安として、補填後の自己負担が10万円を超えていれば申告の価値があります。総所得200万円未満なら5%基準なので、より低いラインで超えます。

私の実感では、出産年は健診差額+通院+分娩の自己負担で10万円を超える世帯が多いです。「うちは一時金でチャラだから無理」と思い込んでいる人ほど、一度足し算してみてほしいです。

医療費控除のやり方を5ステップで解説(所要時間と難易度)

【確定申告】はじめてでもできる!医療費控除の簡単手順!
【確定申告】はじめてでもできる!医療費控除の簡単手順!

ここからは実際の手順です。前提として、源泉徴収票・1年分の医療費の領収書やメモ・マイナンバーが手元にある状態から始めます。所要時間は30分〜1時間が目安です。

1.必要書類を揃える

用意するのは、確定申告書・医療費控除の明細書・源泉徴収票・医療費の領収書等・マイナンバーが分かるもの。還付金の振込口座も控えておきます。

確認の目安:「だれが・いつ・どこに・いくら払ったか」が分かる状態に医療費を並べられたら、ステップ1は完了です。

2.医療費控除の明細書を記入する

医療費は人ごと・病院ごとにまとめて、年間の合計を書きます。1枚1枚を転記する必要はありません。補填された金額(一時金・保険金など)もここで記入します。

つまずきやすいのが補填金の欄。空欄のまま出して還付額が大きくなりすぎ、後から差し引きを指摘されるケースがあります。受け取った給付は必ず書いてください。

確認の目安:合計欄に「支払った医療費の合計」と「補填される金額」の両方が入っていれば正しい状態です。

3.確定申告書を作成する

作成コーナーなら、源泉徴収票の数字を入力し、医療費控除の明細書を読み込ませると、控除額と還付額が自動計算されます。手計算より速くて安全です。

確認の目安:画面に還付される金額(または納付額)が表示されたら、計算は通っています。マイナスでなく還付になっているか見てください。

4.税務署へ提出する

提出方法は、e-Tax・郵送・窓口持参の3つ。還付申告は、対象年分の翌年1月1日から5年間提出できます。急がなくても大丈夫ですが、忘れる前に出すのが一番です。

給与所得者以外の通常の確定申告期間は毎年2月16日から3月15日まで。還付だけなら年明けすぐから出せます。

5.還付金の振り込みを確認する

提出後、指定した口座に還付金が振り込まれます。e-Taxならマイナポータルや受信通知で処理状況を確認できます。

この手順まで進めば、「医療費控除の申告を自分で完了して、還付金の振込を待つ」状態になります。ここまで来れば、あなたの今年の申告は終わりです。

e-Tax・マイナポータル連携でオンライン申告する手順

私が今いちばん勧めるのはe-Taxです。マイナンバーカードとスマホがあれば、税務署に行かずに完結します。医療費通知を取り込めば、明細の入力がぐっと楽になります。

e-Tax・マイナポータル連携でオンライン申告する手順

医療費通知を使った明細書の簡便な書き方

健康保険から届く「医療費のお知らせ」をマイナポータル連携で取り込むと、保険診療分の明細が自動入力されます。1件ずつ手で打つ必要がありません。

ただし通知に載らない費用があります。自費の健診差額、自治体補助の差額、交通費などは別で追加入力が必要です。通知=全部、ではない点に注意してください。

つまずきやすい点と対処法

うまくいかない時で多いのが、マイナンバーカードの読み取りエラーと、医療費通知がまだ反映されていないケースです。通知はその年の分が出そろうまでタイムラグがあります。

読み取りで詰まったら、カードの暗証番号(利用者証明用の4桁)を確認し、スマホのカード位置をずらして再挑戦。通知が出ていなければ、領収書から手入力に切り替えれば申告自体は問題なく進みます。

共働き夫婦はどちらで申告すると得?判断基準と試算

共働きの相談で必ず聞かれるのがこれです。結論はシンプルで、原則「所得税率が高いほうが家族分をまとめて申告する」と還付が大きくなります。

共働き夫婦はどちらで申告すると得?判断基準と試算

申告者の選び方のポイント

医療費は生計を一にする家族分を合算できます。だから夫婦どちらか一方に医療費をまとめ、税率の高い側で申告するのが基本です。

控除額10万円を申告したときの還付の差(概算)
申告者の所得税率還付の目安
5%約5,000円
10%約10,000円
20%約20,000円

同じ医療費でも、税率20%の配偶者で申告すれば還付は約4倍。「妻が払ったから妻で」ではなく、税率で決めるのが得策です。

産休・育休中の所得と扶養の関係

出産年は産休・育休で所得が下がる人が多いです。所得が低い側で申告すると、そもそも納めた税金が少なく、還付も小さくなります。

私なら、育休で所得が大きく下がった年は、迷わず働いている配偶者側で申告します。ここは両論併記する場面ではありません。

住民税・翌年の保育料への波及

医療費控除は所得税だけでなく、翌年の住民税も下げます。住民税が下がると、住民税をもとに決まる保育料や一部の給付の判定にプラスに働くことがあります。

つまり「還付金だけ」で得を判断すると見落とします。翌年の保育料への影響も含めて、トータルで申告者を選ぶのがおすすめです。

特殊ケースの控除可否と里帰り出産の費用の扱い

入院、手術、出産費用の医療費控除の受け方のポイント レンタル代は?領収書は送る必要なし?
入院、手術、出産費用の医療費控除の受け方のポイント レンタル代は?領収書は送る必要なし?

「うちは普通の出産じゃないから対象外かも」と心配する声をよく聞きます。むしろ治療が増えるケースほど医療費は大きく、控除の効果も出やすいです。

切迫早産・帝王切開・不妊治療の場合

切迫早産の入院、帝王切開の手術・入院、不妊治療の費用は、いずれも治療にあたるため対象です。これらは高額になりやすく、高額療養費や保険給付で補填された分を差し引いた残りが控除対象になります。

帝王切開や長期入院は保険金が出ることも多いので、補填金の差し引きを忘れないことが大事です。

里帰り・転院の交通費や宿泊費

里帰り出産の電車・バス代など、公共交通機関の通院・移動費は対象になります。一方、付き添いの宿泊費や自家用車のガソリン代・駐車場代は対象外です。

転院に伴う移動も、治療を受けるための公共交通機関なら含められます。経路と金額をメモしておきましょう。

タクシー利用時の領収書・記録の取り方

陣痛で動けない、深夜で電車がない、といった事情でタクシーを使った場合は、その交通費も対象になります。電車が使えない正当な理由があるかがポイントです。

タクシーは領収書が出るので必ず受け取り、日付と行き先(病院名)を控えておくと安心。乗車記録が残れば申告で困りません。

セルフメディケーション税制との違いと選び方

市販薬の購入が多い年は、セルフメディケーション税制という別の制度もあります。ただし医療費控除とは併用できず、どちらか一方を選びます。

出産がある年は医療費自体が大きいので、まず通常の医療費控除で計算するのが正解です。私の相談でも、出産年にセルフメディケーション税制が有利になったケースはほぼありません。

申告を忘れた・間違えたときの対処と注意点

「去年の出産、申告し忘れた…」という相談はとても多いです。安心してください。さかのぼって申告できます。

申告を忘れた・間違えたときの対処と注意点

過去5年分まで申告できる

還付申告は、対象年分の翌年1月1日から5年間提出できます。つまり数年前の出産でも、まだ間に合う可能性が高いということです。

私が窓口で見てきた中でも、2〜3年前の医療費をまとめて申告して還付を受けた人は珍しくありません。領収書さえ残っていれば、過去分は宝の山です。

更正の請求・修正申告のやり方

すでに申告したけれど医療費を入れ忘れた・少なく書いた場合は「更正の請求」で還付を取り戻せます。逆に多く控除しすぎて税額が不足していたら「修正申告」で直します。

どちらも作成コーナーから手続きできます。間違いに気づいたら放置せず、早めに直すのが安全です。

領収書は5年間保管する

医療費の領収書は、原則として提出は不要です。ただし内容を確認されることがあるため、申告後も5年間は保管しておく必要があります。

明細書に書いた数字の根拠が領収書です。封筒一つにまとめて、年ごとに保管しておくと後で楽です。

よくある質問(FAQ)

よくある質問

妊娠の医療費控除とは何ですか?
妊娠・出産でかかった医療費が一定額を超えたとき、確定申告で所得から差し引ける制度です。1年間に支払った医療費から出産育児一時金などの補填金を引き、さらに10万円(総所得金額等が200万円未満なら総所得の5%)を超えた分が対象になります。健診の自己負担や通院の交通費も含められます。
申告にかかる費用はありますか?
申告自体に手数料はかかりません。e-Tax・郵送・窓口持参のいずれも無料です。マイナンバーカードとスマホがあれば、税務署に行かずに自宅で完結できます。むしろ申告すると還付金が戻る手続きなので、費用を心配する必要はありません。
どこから始めればいいですか?
まずは1年分の医療費の領収書とメモを集め、人ごと・病院ごとに合計するところから始めます。源泉徴収票とマイナンバーを用意したら、国税庁の確定申告書等作成コーナーで医療費控除の明細書を作成し、画面の案内に沿って入力すれば申告できます。

最後にひとつだけ。「一時金でチャラだから」と計算をやめないでください。健診差額と交通費を足すだけで10万円を超える人は本当に多いです。今夜、領収書の入った封筒を引っぱり出すところから始めましょう。

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中村 亜希

中村 亜希

ファイナンシャルプランナー2級(AFP) ・ 育児給付金・補助金の家計相談実務7年

FPとして自治体窓口や社労士事務所と連携しながら、出産・育児に関わる給付金・助成金の一次情報を自ら確認して執筆しています。「申請漏れゼロ」を目標に、制度の改正があるたびに記事を更新しています。

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